格付け結果発表のご挨拶


環境経営格付機構理事長 三田和美

本日はご多忙中にもかかわらず、多数ご来場賜りまして、 有難うございました。また、福川先生には御用の合間を縫って駆けつけてくださいまして、誠に感謝に耐えません。 厚く御礼申し上げます。また、経済産業省からもご出席いただきました。有難うございました。

今回の格付けは、世界的な流れを半歩先んじて実質サステナビリテイ格付け というべき内容を持っており、多くの対象企業では始めての経験となって、複数の部署にわたって対応体制を組んで いただきました。また環境経営学会にも総計101名の学会員にボランテアとして働いていただきました。 昨年7月1日から本年1月31日まで長期にわたってご苦労をおかけしました。 本席をかりまして、心からお詫びと御礼を申し上げます。

ただ、半歩先んじたと申しましても、昨年7月EU委員会が戦略方針として 第三者機関による社会的責任格付けの推進をうちだしているわけですから、あまり差はありません。

格付けという手法を採用いたしましたわれわれの戦略は多数のグリーンな 企業の繁栄をつうじてグリーンな経済社会の実現をめざすもので、企業の繁栄は市場ないし社会における信用の確立に あることは、申すまでもありません。信用はブラックボックスからはうまれませんから、グリーンな企業の信用確立には、 透明性の確保がどうしても必要であります。そこですぐれた伝達手段としてビジュアルレーティングすなわちTREE図 による評価手法をとりました。

環境報告書の役割はもとより基本文書として重要ですが、なかなか読まれないと いう致命的な欠陥がある。TOPにすらページをくってもらえない。ところがTREE図ですと一覧で全容がわかってしまう。 結果から見ると、予想外にインパクトが強烈でありました。

私どもの格付けは、企業経営を、経営健全性、環境対応、社会倫理適応の3側面に わたって、戦略、システム、成果をクロスオーバーで評価するもので、216項目にまたがる質問項目をチェックするという 詳細なものでした。しかも自己評価―エビデンスの究明とMEETING―TOPインタビューというプロセスを必須のものとして設定いたしました。

したがって、格付けをはじめるにあたって、国内約3000社の中から、グリーンであろうと思われる 150社を選定いたしましたが、うち60社は辞退されました。本来これらの企業名は最低点を付与して公表いたすのが国際慣例でありますが、 今回だけは特にそういう措置はとりませんでした。

格付けの過程でも、資料を集約できなかったりして間に合わなかった企業もあり、 最終的には86社が格付けをやりとげました。提供されたエビデンスの限りにおいて、これらはすべてグリーンな企業 といえるものであります。

本日そのうちの72社の社名を公表いたします。この企業数の差はわが国企業の透明性 にかかわる意識の現状をあらわしているものと、ご承知置きください。 各産業でのグリーンチャンピオンとしてノミネートされた企業名の一部をあげると、旭硝子、アサヒビール、出光興産、キャノン、 麒麟ビール、サントリー、東京ガス、セブンイレブン、荏原、日東電工、JT、旭化成、大阪ガス、大林組、キッコーマン、クラレ、 三共、資生堂、昭和シェル、新日本石油、新日鉄、積水化学、大成建設、田辺製薬、中部電力、東洋インキ、トヨタ自動車、 豊田自動織機、パイオニア、日立製作所、日立工機、藤沢薬品、富士フィルム、富士ゼロックス、富士通、三菱化学、住友化学、 三菱地所、三菱商事、ローソン、全日空,など常連も多いなかに新しいメンバーが数多くふくまれています。これは対話重視の格付け手法が、 グリーンな企業を新たに選び出した結果です。

今回採用した私どもの格付け基準が、国際的に見てどのような水準にあるのか、できれば「武士の情け」で 多少やさしくてもよいのではないかというご意見もありましたが、特に社会倫理項目については、三年がかりで国際水準にたっすればよいと割り切って 十分やさしくしてあります。逆に言うと3年間で格付け基準に変化があるということです。ただ同じ「武士の情け」でエビデンスのチェックはもう少し やさしくても良いのでは、という点はダメです。なぜならまず自己評価をやっていただいて、それを第三者である格付機構が検証するわけですから、 ここでファジーにしてしまっては、格付けの信用がなくなります。 サステナブル対応がリスクマネジメントですべて対応できるかと言う点については、改めて論議したいと存じますが、私は否定的です。 ただ今回国際的にみて、わが国企業の体制が全体としてはリスクマネジメントについて比較的取り組みが弱いので、この部分は強調しました。

昨今、エンロン・アンダーセン事件をひとつのきっかけとして、NGOのみならず一部の学者評論家から 大規模株式会社否定論が声高に論じられておりますが、今回の格付けの経験によっても、むしろグリーン対応は大企業のほうが、総てではないですが、 優れています。ただ、世間の風潮からみても、コーポレートガバナンスとか第三者検証のあり方については十分注意をはらうべきでありましょう。 特にアメリカのかたちをまねるだけの「仏作って魂いれず」式ガバナンス改革は、かえって物笑いの種になるであろうと思います。

世界の経営にたいする基準と評価にかかわる流れは大変激しいものがあります。 格付け委員も十分勉強して事にのぞまなければ、対応できません。今回はこの点でも問題を残したと言えます。 改めて自覚を促します。

今回の格付けで私個人として最大の反省点は、ジェンダーに関するものです。 企業の利益を考えても、少子高齢化対策として国のレベルで考えても、もっと女性が働きやすい職場環境の整備 ということを考えるべきであったと思います。 ともあれ、環境経営格付機構は今年以降も格付けを継続し、サステイナブルな企業群(グリーンサークル)が 100社に固まるまで努力を重ねてまいります。各年度の成果も重要ですが、一番大切なものは年度間でどのような 変化・発展を見せるかというところにあると思います。

格付機構も体勢の充実と格付け委員の研鑽に勤めてまいります。 どうか今後とも、よろしくご支援ご協力をお願いします。御清聴、有難うございました。

(2003/02/26)

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